介護休業から職場復帰した時、私の席は、自分の所属する部署の島から離れた場所に、ポツン、と用意されていた。上長の席からも遠い。周囲は知らない人ばかりで、私に関心がない。とても快適だった。好きな時間にランチや休憩が取れ、自由だった。
でも、その数ヶ月後に席替えがあり、新しい席は上長と背中合わせになった。もうポツンではなく、同じ部署の人たちに囲まれた。
席替え後、周囲の人達が私に挨拶に来た。皆若い。私とは親子ほど年齢が離れている。
お昼になった時、近くの席の男性が「お昼行く人いませんかー」と周囲に向かって大きな声で行った。「行く!行く!」と次々と反応する人がおり、グループでお昼に出て行った。
私は、聞こえないふりをした。あの中に入る勇気がなかった。彼らの親世代の私が「行く」と言ったら皆嫌がるだろうと思った。
皆がお昼に出た後、私はポツンと一人で島に残った。この状態を誰かに見られたくないと思い、私は席を立った。でも今私も社食に行ったら、ちょっと前に社食へ向かったグループと会ってしまう。私は社食には行かず、ジムに行くことにした。
ランチタイムのジムは混んでいた。皆、誰とも話さず黙々とワークアウトしている。ここはとても落ち着けた。私も黙々とマシンやダンベルトレーニングをこなし、あっという間に1時間が過ぎた。
そして、再び席に戻った。誰もが私はランチから戻ったと思っただろう。お腹は空いている。ほんの少しだけ仕事して、トイレに行くふりして席を立った。そのまま社食に向かい、パパッと15分ほどでランチを済ませた。
明日のランチタイムはどうしようかと思った。前の席であれば、周囲の人たちは、皆一人でランチしていたので、特に寂しさは感じなかった。
でも今は周囲が皆グループでランチに行くので、一人ランチすることが寂しく、不安に感じる。もし、今、私が部署内の誰かと意見がぶつかったり、仲が悪くなったりしたら、ランチタイムは私の悪口大会になるだろう。そして皆で結束して、私を敵と見なすだろう。このチームでは、誰からも嫌われてはならないと、私は怯えた。
20代だった頃は、会社に同年代女性が沢山いて、グループでランチしていた。年をとるにつれ、一人二人と結婚や出産で退職し、会社に同年代の女性がいなくなった。若い世代に混ぜてもらう勇気はなく、次第に社内で孤独を感じるようになった。
これまで複数の企業で働いてきたが、どの企業も女性は年齢が高くなるほど少なくなる。私の学生時代の友達も、かつては企業で正社員として働いていたが、今は全員退職して家庭に入っている。私はマイノリティだ。会社でもプライベートでもマイノリティで、居場所がない。
マイノリティとして社会の中で快適に過ごすには、マジョリティと上手くやっていくしかない。
周囲にロールモデルはいない。これまで、企業に残る50代以上の女性が、若い世代と上手に関わっている例を見たことがない。
自分が20代、30代だった頃、社内にわずかにいた50代の女性達の誰とも、私は仲良くしようとしなかった。たまに彼女達とランチをしたことがあるが、大抵つまらなかった。なぜなら、彼女達は私にアドバイスしたり、何かを教えようとするからだ。
ある50代の先輩は、面倒見の良く、困ったことがあると親身に相談に乗ってくれ、アドバイスをくれた。だが、その逆は一度もなかった。彼女から私に相談をすることはなかった。悩みを打ち明けられたことはあったが、すでに彼女は回答を持っていて、私からのアドバイスを聞き入れる余地はなかった。私も先輩にアドバイスをするのは失礼だと思い慎んだ。
彼女からのアドバイスがトンチンカンで共感できなくても、「そうですよね〜」などと言い、受け入れたフリをしていた。彼女の気分を害したくなかった。会話は対等なやりとりではなく、年上が年下に教えるという一方通行だった。私の発する言葉は心からそう思ったものではなく、不毛だった。
私は、これから年下とも年上とも、同年代だと思って話そうと思う。年代を意識したら会話が不毛で楽しくなくなる。同年代だと思えば本音が出しやすく会話が楽しめ、自分がマイノリティであることも忘れられる。例え相手が私を年上扱いしても、それには乗らない。


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